概要・活動内容

国際交流委員会

Tenth AACR-JCA Joint Conference “Breakthroughs in Cancer Research: From Biology to Therapuetics”に参加して

札幌医科大学医学部付属フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門
田村 みゆき


平成27年度新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流委員会海外派遣事業による助成をいただき、平成28年2月16日から20日までの5日間、アメリカのハワイ州マウイ島において開催されたTenth AACR-JCA Joint Conferenceに参加させていただきました。AACRとJCAとの「米国癌学会・日本癌学会合同会議」は日米の第一線のがん研究者が最新の研究成果を報告して情報交換や議論を行い、国際的な共同研究を推進することを目的としています。第10回となった今回は“Breakthroughs in Cancer Research: From Biology to Therapeutics”をテーマとし、日米を中心に世界各国から臨床腫瘍医、基礎研究者、製薬関係者などが参加し、がんの診断、治療および予防に関しての基礎から応用までの幅広い研究成果が議論されました。

本学会で私は「CRKL oncogene is downregulated by p53 through miR-200s」というタイトルでポスター発表を行いました。p53は、ヒトがんにおいて最も高頻度に遺伝子変異が検出されているがん抑制遺伝子です。 DNA損傷などのストレスによって活性化したp53タンパクは転写因子としてゲノム上の特異的な応答配列に結合し、近傍の標的遺伝子の転写を活性化することによって、腫瘍抑制機能を発揮していることが明らかになっています。p53およびp53ファミリー(p73、p63)の活性化機構、標的遺伝子の同定は多く報告されてきましたが、p53によって発現が抑制される遺伝子についての体系的な解析はあまり行われてきませんでした。一方、最近のゲノム解析の進展により、転写されたRNAの多くがタンパクに翻訳されない非コードRNA であり、遺伝子発現の様々な段階で重要な制御因子として機能することが明らかになってきました。microRNA (miRNA)は20数塩基の短い非コードRNAで、標的遺伝子の3'非翻訳領域に結合して転写・翻訳抑制に関与しており、がんを含む多くの疾患との関連が知られています。したがってp53がmiRNAの発現誘導を介して、特定の遺伝子を間接的に抑制している可能性が考えられます。
本研究では、p53誘導性miRNA、miR-200b/200c/429の新規標的遺伝子としてCRKLを同定しました。CRKL遺伝子の3’-UTRにmiR-200b/200c/429の結合配列を同定し、p53ファミリーがmiR-200b/200c/429を転写活性化することで、この配列を介してCRKLの発現を抑制していることを示しました。CRKLはCRKファミリー(CRKT、CRKU、CRKL)に属するアダプタータンパクです。CRKLは成長因子やサイトカインへの応答でいくつかのシグナル伝達経路において機能しており、慢性骨髄性白血病におけるBCR-ABLキナーゼの基質として知られていました。最近、CRKLが肺癌、胃癌、肝細胞癌などの固形癌において、進行とともに高発現し、浸潤や転移、増殖と関連することが報告されてきました。本研究においても公共のデータベースを用いた解析から多数の固形癌でCRKLが発現上昇していることを明らかにしました。また、p53変異のある症例で有意にCRKLが発現上昇していました。これらの結果から、p53ファミリーがmiR-200b/200c/429の転写誘導を介してCRKLの発現を制御し、がんの浸潤、転移能を抑制していることが示唆されました。

今回の学会は、海外での国際学会ということで大変緊張しましたが、とてもよい機会を与えて頂きました。がん研究における様々な分野の発表を聴くことができ、またポスター発表を通じて研究者の方と貴重な意見交換をすることができました。本学会に参加して得た知見を今後の研究に反映させていきたいと考えています。

最後になりますが、この様な貴重な機会を与えていただきました文部科学省新学術領域「がん支援」国際交流委員会の石川冬木先生はじめ諸先生方、事務手続き等でお世話になりました総括支援活動班の平野尚子様に深く御礼申し上げます。