概要・活動内容

国際交流委員会

第10回 日米癌合同会議に参加して

金沢大学がん進展制御研究所 分子生体応答 助教
佐々木 宗一郎


この度、文科省新学術領域「がん支援」平成27年度国際交流海外派遣支援に採択していただき、平成28年度2月16日から20日までの5日間にわたりアメリカ合衆国、ハワイ州マウイ島にて開催されたTenth AACR-JCA Joint Conference on Breakthroughs in Cancer Research: From Biology to Therapeuticsに参加する機会をいただきました。AACRと日本癌学会の共同で開催されている日米癌合同会議は3年に一度ということもあり参加する機会になかなか恵まれませんでしたが、今回がん支援班の方々のご協力を頂くことで、この素晴らしい会議への参加が叶った次第です。

初日はProf. Suzanne Topalianによる免疫チェックポイント療法と中村祐輔先生の新規がん治療薬開発のkeynote lectureから始まりました。今回の会議の副題である、『FROM BIOLOGY TO THERAPEUTICS』を体現したような両氏のご講演は感嘆するばかりで、マウイ島の気候により緩んだ私の気持ちを引き締めるには十分すぎるインパクトを与えていただきました。翌日からの本セッションもエピジェネティクスから腫瘍微小環境、免疫療法など多岐にわたる非常に幅広いがん研究領域をカバーした構成となっており、なおかつ個々の分野のトップレベルのスピーカーによる最新の研究成果に触れる機会をもつことができる素晴らしい内容の会議でした。それに加え、各日の講演後に行われたポスターセッションでは、3日間合わせておよそ350演題もの発表があり、連日のように熱い議論が繰り広げられておりました。オーラルセッションとは異なり、Immatureなものからsubmit間近なものまでその内容は幅広く、しかも各人が熱い熱意を備えて行われるわけですから、自分の興味を持っている領域は当然として、今まであまり踏み込んでこなかった領域の発表についても、様々な国の研究者の方々との熱いディスカッションに花を咲かせることとなりました。

私はがん領域のなかでも、腫瘍微小環境とがん細胞との相互作用について研究を続けています。その中でも近年では、がんの『転移』、特に乳癌の骨転移における腫瘍微小環境の影響についての研究に取り組んでまいりました。がん治療においては、これまで主流であったがん細胞を標的とする治療法に加え、構築されるがん微小環境を標的とする治療法に注目が集まってきています。実際、今回の会議においても腫瘍微小環境の重要性に注目した研究が数多くみられました。私が強く興味をひかれた3日目の午前に行われたTumor Microenvironmentのセッションでは腫瘍免疫の第一人者であるDrew Pardoll氏によるバクテリアを介した大腸がんと炎症との関連性の講演に始まり、Gou Young Koh氏によるAngiopoietin/Tie2を中心とした新生腫瘍血管を標的としたアプローチによる研究、そしてAmanda Lund氏によるメラノーマの転移におけるリンパ管を介した微小環境の制御など、多彩な切り口による多様な研究が発表されました。また同日午後に行われたCancer Immunotherapyのセッションでは、日本から大阪大学の坂口先生による制御性T細胞による腫瘍免疫の講演が行われ、次々に示される数々の未発表データに非常に興味を持って聞き入ったことに加え、会場から寄せられた多くの質問がその注目度の高さを集めていました。

私自身も乳癌の骨転移とケモカインとの関連性についてポスター発表を行いました。研究者が多くない領域ということもあり、同じ領域の研究をされている方とは技術的な情報交換も含め、お互いの研究方針についても深く意見交換することができました。今回の会議に参加して特に感じたのが参加している方々の積極性で、実際に自分の発表においても全く異なった領域の方々から、目から鱗が落ちるようなご意見を頂き、異なった領域とのディスカッションの新鮮さと重要性を改めて実感することとなりました。

海外の学会らしく午前と午後のセッションの間には長めの休憩時間があり、世界中より参加されている方々とハレアカラ国立公園やホエールウォッチングを始めとしたnon-scientificな交流を楽しむことが出来ました。会議中のみならずそのような交流を通じて、現在の自分の置かれている状況や自身の研究領域における自分の位置といったものを再確認し、今後の研究に向けた意欲とたくさんのアイディアを得たことが最高の土産となったことは言うまでもありません。
これを原動力とし、また次回以降も発表できるように研究成果を積み重ねていきたいと思いました。

最後になりましたが、今回このような素晴らしい学会に参加する機会を与えてくださいました文部科学省新学術領域「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流海外派遣事業に携わっておられる諸先生方、また事務手続きで大変お世話になりました平野様をはじめとする事務局の方々に心より感謝いたします。