概要・活動内容

国際交流委員会

AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeuticsに参加して

公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部 主任研究員
片山 量平

はじめに

平成27年度新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流委員会から研究者海外派遣事業の助成を頂き、平成27年11月5日より9日にかけてアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンで開催されたAACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeuticsに参加する機会を頂きました。
この学会は、米国癌学会(AACR),米国国立癌研究所(NCI),欧州癌研究治療機関(EORTC)が合同で開催する、がん分子標的とがん薬物療法にFocusした学術集会であり、約3000名以上の産官学の研究者・医師らが参加し、多くの最新の知見が発表・討議されました。

2015AACR-NCI-EORTC

本学会でもやはりホットとなっていたトピックは免疫チェックポイント阻害薬(抗体)やCAR-T療法など、各種がん免疫療法に関する話題でした。免疫チェックポイント阻害薬がどの様な患者で効果が見られ、その分子基盤はどういったものかといった研究や、新しい免疫療法についての話題をはじめ、がん免疫療法の最先端とこれからに向けての課題が示されました。また、liquidバイオプシーのセッションでは、circulating tumor DNAの解析から、がんのclonal evolutionをモニターした研究成果などが報告されました。また、microfluidicデバイスを用いてcirculating tumor cellを生きたまま単離し行われた興味深い解析結果についても報告されていました。がん分子標的療法のセッションでは、乳がんにおける分子標的薬とホルモン療法の併用についての話題やEGFR変異陽性肺がんにおけるEGFR阻害薬耐性変異がいつの時点でどのように発生してくるのかという発表などがなされていました。チロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的薬は顕著な抗腫瘍効果が見られる一方で、残念ながらほとんどの症例で獲得耐性が生じてしまうことが知られています。この耐性細胞がいつの時点でどのように出現してくるのかという点について、これまで大きな謎とされてきましたが、EGFR耐性についての上記の発表は、1つの答えを示している重要な発見ではないかと思われました。この研究の詳細なデータはポスター発表でも同じ研究グループによって発表されており、多くの研究者らが詰めかけていたのが印象的でした。近年、NTRKの融合遺伝子が、肺がんや大腸がんでも発見されましたが、そのNTRK融合遺伝子陽性がんに対する分子標的薬についての発表と、さらにその獲得耐性機構が発表され、同日にCancer Discovery誌のWeb上で掲載されるという2重の驚きもありました。我々のグループにおいてもNTRK1融合遺伝子陽性がんについて、その獲得耐性機構を発見しており、この学会において我々の研究室の大学院生がポスター発表していたものの、まだ論文化に至っていなかったため、その発表を聞き大きなショックをうけました。しかし一方で我々の実験モデルで見つけた耐性機構の少なくとも一部は実際に患者さんにおいても起こるものであったということから、よりこの研究を加速しなくてはという強い思いに至りました。

私自身の発表はというと、今回は一般演題の中から一部をメインホールでの口頭発表に指定するという制度があり、幸いにもその口頭発表に選んでいただきました。Novel ceritinib resistance mechanisms: new resistant mutation, fibroblast growth factor receptor 3 overexpression and cMET amplification-mediated ceritinib resistanceというタイトルで、ALK融合遺伝子陽性肺がんに対する獲得耐性、なかでも第2世代のALK阻害薬Ceritinibに対する新規耐性機構を複数発見したので発表いたしました。その時点ではまだ論文がAcceptになっていなかったP糖たんぱく質の過剰発現を介した新たなCeritinib耐性についても発表し、発表の後多くの方から質問等を頂き、有意義なDiscussionができました。
最終日には、NCIをはじめとして、バイオバンクの状況と、今後の一般利用に向けた公開についての話等もあり、非常に大きなリソースを用いた強力な研究推進が期待されました。

学会での口頭発表の様子。ものすごく緊張しています。

ボストンは私が2010年より2012年まで日本学術振興会海外特別研究員として留学させていただき、住んでいた街でしたので、非常に懐かしくもあり、また留学時代の友人、メンターの先生方ともお会いし、有意義なDiscussionをする時間にも恵まれました。11月のボストンといえば、年によってはもう雪が積もるときもあるほど寒くなる時期でしたので、しっかりとした防寒具を持っていきましたが、驚いたことに最初の2日間は20度を超えるかどうかという例年からすれば異常に暖かい気候でした。数日は寒い日もありましたがそれでも過ごしやすく、また街中には紅葉している木々も残っており、最終日のセッションから帰国便の出発までの1日弱の間には、ボストンの街中をちょっと散策することもできました。

ボストン中心にあるPublic Gardenでは、わずかに紅葉が残っていました。

おわりに

最後になりますが、今回このような貴重な機会を頂戴しました文部科学省科学研究費 新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流委員会の石川冬木先生はじめ諸先生方、ならびに事務手続きでお世話頂きました同事務局の平野様をはじめ関係者の皆様方に心から感謝申し上げます。