概要・活動内容

国際交流委員会

SITC 30th Anniversary Annual Meetingに参加して

慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 細胞情報研究部門
谷口 智憲


この度、私は、平成27年度文部科学省「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流海外派遣事業の助成をいただき、2015年11月3日から10日まで渡米し、SITC 30th Anniversary Annual Meetingに参加して参りました。本学会は、米国のがん免疫学会 (Society for Immunotherapy of Cancer (SITC)) の総会で、がん免疫学の専門学会です。近年、がん免疫療法は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1/PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬、CAR(chimeric antigen receptor)-T細胞療法が、明らかな臨床効果を示し、ある種のがんに対しては、標準治療の一つになりつつあります。本学会では、基礎医学的な研究のみならず、最新の臨床試験の報告、それらの試験の臨床検体から分かった新たな基礎的知見が多く発表され、この分野の最新の情報を得るのにとても有用でした。一例をあげると、現状の免疫チェックポイント阻害薬が効かない、すなわち腫瘍内T細胞浸潤が少ない症例をいかに治療するか、腫瘍反応性T細胞を同定するマーカーは何か、患者個々人のNeo-antigenに対するT細胞レセプターを用いる養子免疫療法の開発、新たな免疫チェックポイント関連の治療標的分子の評価、などが討議されました。

本学会で、私は、新規がん特異的抗原を標的としたCAR-T療法に関するポスター発表を行いました。CAR-T治療は、CD19を標的として、血液がんに対しては、顕著な臨床効果を示していますが、固形がんに対しては、よい標的が未だ見つかっておらず、その有用性が示されておりません。今回、我々が同定した抗原を標的として、固形がんを治療できる可能性を発表して参りました。ポスターのデスカッションでは、例えば抗原のがん特異性の問題、がん組織へT細胞を効率的に浸潤させる方法など様々な問題点を議論でき、今後の研究に非常に有用でした。また、本学会が始まる前日には、NIHのDr. Steven A. Rosenbergの研究室を訪問し、CAR-T細胞療法を含めた養子免疫療法に関して、議論して参りました。

もう一つ特筆すべきは、本学会の今年のRichard V. Smalley, MD memorial awardを、PD-1の発見者である、日本の本庶佑先生が受賞し、特別講演をなさったことです。PD-1の発見から創薬に至るまでの経緯を、お話になり、地道な基礎医学的な研究がいかに重要かと言うことを認識させられ、大変感銘を受ける講演でした。

今回の学会場であった、National harborは、首都ワシントンD.C.から南に約30分くだった、ポトマック川沿いの古都アレキサンドリアの対岸にある、あらたな開発地区です。ヨットハーバーや、ホテル、大会議場、レストランなどが数多くあり、現在も開発が進んでいます。完成すればワシントン地区の新たな名所となると思います。今回は、ポトマック川を望む風光明媚な、まだどこか静かなこの地区で、学会に集中することが出来ました。また、今回は本学会の30周年記念ということもあり、レセプションが、スミソニアン博物館の航空宇宙博物館を、夜、貸し切って盛大に行われました。まさにNight museumの世界で、食事などをしながら薄暗い館内で、展示物を鑑賞するという普段では味わえない経験が出来たことも、今回のすばらしい思い出の一つでした。

30周年記念のレセプションが行われた航空宇宙博物館

最後に、本学会への参加をサポートして下さった国際交流海外派遣事業、及びその選考委員の先生方にこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。今回の経験をいかし、世界に通用するがん免疫学研究者を目指して、今後さらに研究を発展させていきたいと思います。