概要・活動内容

国際交流委員会

Dana-Farber Cancer Institute訪問ならびにAACR-Special Conference 2014 “Cellular Heterogeneity in the Tumor Microenvironment” 参加を終えて

公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部 特任研究員
高木 聡




平成25年度新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流委員会から若手海外派遣事業の助成をいただき、平成26年2月23日から25日の3日間でアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンにあるDana-Farber Cancer Instituteを訪問した後、2月26日から3月3日までの6日間にかけてカリフォルニア州サンディエゴで開催されたAACR-Special Conference 2014 “Cellular Heterogeneity in the Tumor Microenvironment” に参加する機会を頂きました。


Dana-Farber Cancer Instituteでは、ハーバード大学医学部のIrene Ghobrial教授の研究室を訪問しました。Ireneの研究室では、多発性骨髄腫やワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症といったB細胞性腫瘍を研究対象としており、これらのがんが有する骨微小環境下を好んで増殖するという特性を生かした研究が進められています。今回の訪問は共同研究の打ち合わせを目的としていたのですが、打ち合わせ後にはラボミーティングにも参加させていただき、進行中のホットな研究内容まで紹介していただくことができました。ここにその詳細を述べることができずに残念ですが、骨微小環境が腫瘍内多様性におよぼす影響に関する研究はその研究アプローチがとても斬新で、今後の展開がとても期待されるものでした。なお、2月下旬のボストンは最高気温ですら氷点下の日もあり、生まれてこのかた関東圏で生活してきた私にとっては地獄のような寒さでした。カチコチに凍りついたCharles Riverを目の当たりにした時には、なぜ人類はこのような土地で生活をしようと思ったのだろうかという疑問が頭を過ぎりました。次回は暖かい時期に訪れます。


AACR-Special Conference 2014 “Cellular Heterogeneity in the Tumor Microenvironment” は、近年注目されているがん細胞を取りまく腫瘍微小環境を研究対象とした演題に特化しており、当該研究領域の最新知見がぎゅっと濃縮された中身の濃い学会でした。以下、簡潔に本会の主要演題に関して記載します。オープニングでは、David Lydenが、腫瘍由来Exosomeを介した前転移ニッチ制御に関して報告しました。第1セッションTumor-Associated Blood Vessels and Lymphaticsでは、Massimiliano Mazzoneが腫瘍浸潤マクロファージにおけるNeuropilin-1の機能に関して、Napoleone FerraraがCD11b+Gr1+骨髄細胞の抗VEGF療法抵抗性への寄与に関して、Kari AlitaloがAngiopoietinやTie2を標的とした抗血管新生療法の妥当性に関して報告しました。第2セッションInnate Immune Cells in the Tumor Microenvironmentでは、Mikael PittetがAngiotensinを介した腫瘍浸潤マクロファージの誘導機構に関して、Swarnali Acharyyaが乳がん由来のCXCL1/2により腫瘍内へ動員されたCD11b+Ly6G+ granulocytic myeloidの化学療法抵抗性への寄与に関して、Claire Lewisがアルキル化剤処理後に腫瘍内へ浸潤するM2マクロファージの腫瘍悪性化への寄与に関して報告しました。第3セッションAdaptive Immune Cells in the Tumor Microenvironmentでは、Karin de Visserが腫瘍浸潤顆粒球が乳がんの転移を亢進する機序に関して、Lisa Coussensが腫瘍浸潤B細胞による腫瘍浸潤マクロファージの活性化を介した腫瘍悪性化機構に関して、Jerome Galonががん免疫療法に関して報告しました。第4セッションTranslational and Therapeutic Potential of the Tumor Microenvironmentでは、Zena WerbがLuminalタイプ乳がんにおけるGATA3を起点とした腫瘍内微小環境の構築に関して、Peter NelsonがDNA Damage-associated Secretory Programを介した腫瘍内微小環境の構築に関して、Christopher Logothetisが骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんへの骨微小環境を標的とした治療アプローチに関して報告しました。第5セッションTumor Microenvironment and Metabolic Adaptationでは、Raghu Kalluriが腫瘍内の筋線維芽細胞が腫瘍進展に与える影響に関して、Celeste Simonが低酸素に関して報告しました。第6セッションCell Interaction in the Tumor Microenvironmentでは、John CondeelisがCSF-1/EGF paracrine relay loopを介した腫瘍-マクロファージ相互作用に関して、Gabriele Bergersが抗血管新生療法に抵抗性を付与する腫瘍内細胞集団に関して報告しました。第7セッションBrain Tumor Microenvironmentでは、Luis Paradaが脳腫瘍モデルマウスに関して、Joan Seoaneが神経幹細胞を蛍光標識した脳腫瘍発がんモデルマウスを用いた解析に関して、Johanna Joyceが神経膠芽腫に対するTGF-β阻害剤の有用性に関して報告しました。第8セッションThe Evolving Tumor Microenvironmentでは、Mary HelenがTGF-β阻害剤と放射線の併用療法の有用性に関して、Clark Isackeが乳がん悪性化に寄与する活性型線維芽細胞に関して報告しました。総体として、腫瘍内微小環境を構築する細胞の多様性に関してはかなり解析が進んでおり、大方役者が出揃ったような印象を受けました。薬剤を用いた治療実験に加えて進行中の臨床試験に関する報告もちらほらと見受けられ、この研究領域がまさにこれから発展していくであろうことを実感しました。そのような研究領域のとにかく凄い量の最新情報を朝から晩まで浴びる事ができ、非常に充実した毎日を過ごしました。


また、ポスターセッションは2日間で200程度の演題数だったことから、じっくり全てに目を通すことができました。私はこれまで、血小板凝集促進因子Aggrus/podoplaninの機能解析とその特異的阻害剤開発を研究テーマとすることで、血小板とがん細胞の相互作用が腫瘍悪性化におよぼす役割に関して解析を行ってきました。今回の学会では、腫瘍内部に存在する血小板がAggrusを介して活性化されることで腫瘍増殖に寄与することを報告したのですが、会場内で血小板と腫瘍の相互作用に関して報告しているグループがほとんど居なかったおかげか、多くの方が興味を持って聞きに来て下さいました。多くの有益なアドバイスを頂くことができ、非常に有意義な学会発表となりました。なお、サンディエゴ滞在期間中は連日雨に降られ、まぶしい日差しが降り注ぐ夢のカリフォルニアのイメージとは程遠い日々を過ごしました。次回こそは天気の良い時に訪れたいと思います。


最後になりますが、今回このような機会を与えて頂きました文部科学省科学研究費新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」国際交流委員会の先生方、また事務手続きでお世話頂きました同事務局の平野さまに心から感謝いたします。


写真1. Harvard Medical School

写真1. Harvard Medical School

写真2. AACR-Special Conference会場内

写真2. AACR-Special Conference会場内

写真3. AACR-Special Conferenceポスター会場内

写真3. AACR-Special Conferenceポスター会場内