概要・活動内容

個体レベルでのがん研究支援活動

平成26年度 個体レベルでのがん研究支援活動 ワークショップ報告
個体レベルでのがん研究の新展開 ― 細胞の可塑性と発がん ―

平成27年2月5日〜6日の2日間、滋賀県琵琶湖ホテルにおいて平成26年度「個体レベルでのがん研究支援活動」ワークショップが開催された。「細胞の可塑性と発がん」をテーマとして、全国から合計88名が参加した。今回のワークショップでは、新たな試みとしてEnglish sessionを設定し、miRNA研究で世界を牽引するRobert Blelloch教授(UCSF)を招いた。それに伴い、特別講演2題、基調講演1題、ポスター48題は英語にて発表を行った。

2月5日には、中村卓郎先生の開会挨拶に引き続き、若手研究者を中心とした13題の口演発表が行われた。若手ならではの勢いのある発表とともに活発な質疑応答がなされた。その後、English sessionとして近藤豊先生(名古屋市立大学)からlincRNAによるエピゲノム制御とグリオーマ発生についての基調講演があった。引き続きBlelloch教授により特別講演が行われた。miRNA研究領域のオーバービューに加えて未発表成果を示しながらmiRNA制御による細胞分化制御や前立腺発がんへの関与について最新の知見が紹介された。近藤先生、Blelloch教授、いずれの講演でもlincRNA、miRNAが細胞分化制御によるがん細胞の可塑性に関与することを個体レベルでの実験にてお示しになり、lincRNA、miRNAを介するがん細胞の可塑性ががん細胞制御の標的となることを期待させる発表であった。

2月6日午前中はEnglish sessionとして佐谷秀行先生(慶応大学)からの特別講演とポスター発表が行われた。佐谷先生からは細胞骨格分子による細胞分化制御と発がんへの関与、さらには細胞骨格分子制御によるがん治療の可能性が示された。その後、Blelloch教授も参加して48題のポスター発表が行われた。約2時間の発表時間の間、途切れることなく活発な議論がなされ、ポスター会場は熱気に満ちあふれていた。昼食の後は、今井田克己先生(香川大学)による基調講演が行われた。肺がん動物モデルを用いた発がんメカニズム解明の試みや、その治療応用の可能性が示され、個体レベルでの研究の利点を最大限に活用した研究が紹介された。引き続き、ワークショップとして、個体レベルでの発がん研究領域の第一線で活躍されている8名の先生方から発表がなされた。がん間質細胞が作り出す微小環境によるがんの進展への影響について最新の研究結果が示された。また、がん細胞の新たな培養方法と免疫不全動物を組み合わせた独創的な研究や、さらには希少がんの新規モデルマウスの作製および解析など、あたらしいアニマルモデルについても紹介があった。

以上のように、今回のワークショップでは、個体レベルならではのがん研究、および細胞の分化やエピジェネティクスに深く関連したがん研究について、最新の研究成果が発表された。細胞分化が関与するがん細胞の可塑性が、発がん過程の理解のみならず、治療の標的となりうることを期待させる成果が多数発表され、大変意義深いワークショップとなった。さらに多くの若手研究者が熱心な議論を通して交流する姿が印象的であった。個体レベルでのがん研究に関わる研究者間の交流を介して、新たな共同研究が始まる可能性が期待された。

例年通り、本年度のワークショップに貢献した若手研究者3名を表彰した。
優秀口演賞:大熊敦史(がん研究所)
優秀ポスター賞:河村真吾(京都大学)
ベストディスカッサー賞:勝島啓佑(名古屋市立大学)

最後に、「個体レベルでのがん研究支援活動」ワークショップ開催にあたって支援をして頂きました、新学術領域「がん支援」総括支援班、および個体レベルでのがん研究支援活動班、中でも様々な助言を頂きました病理形態研究支援班の先生方に感謝致します。

(文責:山田泰広)